<掛布2軍監督連載(下)>
2016.03.29 Tuesday
15日にウエスタン・リーグが開幕した。
現役時代「ミスタータイガース」として活躍し、昨オフ、
2軍監督に就任した掛布雅之氏が、若虎たちをどのように
変えていくのか。当コラムでは同監督を直撃取材した。
春季安芸キャンプからスタートした掛布阪神の「超変革」
を3回連載で追う。
**********
「よく聞いてくれ。今シーズンが終わるとき、この中から
何人かの選手がやめていく。でも、かりに整理されたとしても、
タイガースのユニホームを着て良かった。と思える1年にしない
とダメだ。無駄な時間をつくるな。これ以上できない、
というところまで練習してやめてほしい」
キャンプ初日。選手を前にした掛布監督の訓示だ。表情は穏やかで、
悔いを残す選手が出ないための温かいアドバイスだが、
口調は熱っぽい。言葉のひと言、ひと言の中身を考えると
かなり厳しい内容だ。久々に着た縦縞のユニホーム。気持ちは
ぐっと引き締まっている。そこに、憧れのプロ野球選手に
なったときの自分がいた。思い浮かぶのは、桧(ひのき)舞台での
活躍を目指してガムシャラに野球に取り組んだこと。さらに上を見据え、
常に向上心を抱いて、自分から進んで積極的に練習したあの日。
特打あり、個人ノックあり。かなり厳しいシゴキにも一度たりとも
音をあげたことがない。鍛えに、鍛え抜いて球界のスターに
のぼり詰めた男。いま、前回明記したように背番号31を
つぐ選手を待ちわびている。
だから、自分が歩いてきた道が蘇ってくる。「ファームの選手
であっても、いい意味で野球の怖さを感じてもらいたい。
自分の野球に自分で責任を持ってほしい。この世界、
楽しいだけでは継続できません。怖さがあるから一生懸命練習して
継続できるんですよ」(掛布監督)己の現状に満足するな。
妥協するなということだ。そういえば選手時代、それも
球界のスターに君臨していたころ、こんなことをつぶやいて
いたことがある。「まさか」と思える話だ。「開幕して
何試合かホームランが出ないときとか、ヒットが出ないとき
なんか“オレ、今年はもうホームランは打てないんじゃないか”
とか、ヒットも同じで“打てるのかなあ”と思ってしまう」と−。
要するに野球の怖さを感じるときで、その思いを払拭するために、
自分から進んで練習に打ち込んだのが掛布流。若手よ、
前向きになれ。何事にも積極的に挑戦することだ。
その練習も、やらされる練習と、自分から進んで頑張る練習では、
心、技、体の進歩にかなりの差がつく。その差は「やる気」
の問題だが、選手時代、こんな掛布に遭遇したこともある。
確かハワイキャンプだったと記憶する。夜中である。
ホテル内広場の片隅で、一人黙々とバットを振っている選手がいた。
左バッターである。やはり掛布だった。周辺の研ぎ澄まされた空気。
緊張感。その雰囲気たるや近寄りがたい。現ソフトバンク
・王会長のごとく一本足でジーッと立ち1点を見詰める。
ものすごい集中力で周囲は殺気立っている。そして、
ひとスイング毎に「ハッ」と気合十分の声が発せられる。
これが身をもって練習を実行する掛布の姿だ。また遠征時、
野球道具は荷物車が宿舎まで運んでくれる昨今、
ただ1人素振り用のバットを持参して遠征していた。
プロ野球界のスターたる一面を垣間見たし、本物のプロを見せてくれた人。
−今季のファームは
掛布2軍監督 育てるのと、勝つことは共通しています。
当然ファームも勝ちにこだわっていきます。勝つ試合から
覚える野球があれば、負けゲームで大いに反省することも
ある中で選手は育っていきます。ファームも目標は優勝ですが、
僕の理想は1軍が日本一になって。2軍は最下位なんですよ。
1軍は同じ戦力で1シーズンを戦うのは結構むずかしい。
でも、そのときにファームが予備軍を持っていれば
1軍の歯車は止まらないはずです。目標はあくまで
金本監督の胴上げです。ファームの戦力は1軍に
全部吸い上げられてボロボロになっても、
それは2軍にとっては喜ばしいことですよ。
チームが一丸となっている発言。今シーズンの采配が
いまから楽しみだが、早くも驚きの「超変革」指導があった。
3月20日鳴尾浜球場でのオリックス3回戦。抑えの石崎が
9回、フルカウントから投じたストレートを、
ブランコにバックスクリーン越えの超特大決勝ホーマーを
浴びると「あれでいいんです。あれがプロの勝負ですよ」
と絶賛していた。掛布流の発想、本来なら「1発だけは
避ける場面」のアドバイスだろうが、さすが大物。
その選手の素材にもよるが、より大きく育つアドバイスだけに
石崎がどう受け止めたか。今後各選手が指導されたときのひと言、
ひと言の意図をしっかり受け止めることができるなら、
ひ弱なチームから頼もしいチームに超変革するだろう。
現役時代「ミスタータイガース」として活躍し、昨オフ、
2軍監督に就任した掛布雅之氏が、若虎たちをどのように
変えていくのか。当コラムでは同監督を直撃取材した。
春季安芸キャンプからスタートした掛布阪神の「超変革」
を3回連載で追う。
**********
「よく聞いてくれ。今シーズンが終わるとき、この中から
何人かの選手がやめていく。でも、かりに整理されたとしても、
タイガースのユニホームを着て良かった。と思える1年にしない
とダメだ。無駄な時間をつくるな。これ以上できない、
というところまで練習してやめてほしい」
キャンプ初日。選手を前にした掛布監督の訓示だ。表情は穏やかで、
悔いを残す選手が出ないための温かいアドバイスだが、
口調は熱っぽい。言葉のひと言、ひと言の中身を考えると
かなり厳しい内容だ。久々に着た縦縞のユニホーム。気持ちは
ぐっと引き締まっている。そこに、憧れのプロ野球選手に
なったときの自分がいた。思い浮かぶのは、桧(ひのき)舞台での
活躍を目指してガムシャラに野球に取り組んだこと。さらに上を見据え、
常に向上心を抱いて、自分から進んで積極的に練習したあの日。
特打あり、個人ノックあり。かなり厳しいシゴキにも一度たりとも
音をあげたことがない。鍛えに、鍛え抜いて球界のスターに
のぼり詰めた男。いま、前回明記したように背番号31を
つぐ選手を待ちわびている。
だから、自分が歩いてきた道が蘇ってくる。「ファームの選手
であっても、いい意味で野球の怖さを感じてもらいたい。
自分の野球に自分で責任を持ってほしい。この世界、
楽しいだけでは継続できません。怖さがあるから一生懸命練習して
継続できるんですよ」(掛布監督)己の現状に満足するな。
妥協するなということだ。そういえば選手時代、それも
球界のスターに君臨していたころ、こんなことをつぶやいて
いたことがある。「まさか」と思える話だ。「開幕して
何試合かホームランが出ないときとか、ヒットが出ないとき
なんか“オレ、今年はもうホームランは打てないんじゃないか”
とか、ヒットも同じで“打てるのかなあ”と思ってしまう」と−。
要するに野球の怖さを感じるときで、その思いを払拭するために、
自分から進んで練習に打ち込んだのが掛布流。若手よ、
前向きになれ。何事にも積極的に挑戦することだ。
その練習も、やらされる練習と、自分から進んで頑張る練習では、
心、技、体の進歩にかなりの差がつく。その差は「やる気」
の問題だが、選手時代、こんな掛布に遭遇したこともある。
確かハワイキャンプだったと記憶する。夜中である。
ホテル内広場の片隅で、一人黙々とバットを振っている選手がいた。
左バッターである。やはり掛布だった。周辺の研ぎ澄まされた空気。
緊張感。その雰囲気たるや近寄りがたい。現ソフトバンク
・王会長のごとく一本足でジーッと立ち1点を見詰める。
ものすごい集中力で周囲は殺気立っている。そして、
ひとスイング毎に「ハッ」と気合十分の声が発せられる。
これが身をもって練習を実行する掛布の姿だ。また遠征時、
野球道具は荷物車が宿舎まで運んでくれる昨今、
ただ1人素振り用のバットを持参して遠征していた。
プロ野球界のスターたる一面を垣間見たし、本物のプロを見せてくれた人。
−今季のファームは
掛布2軍監督 育てるのと、勝つことは共通しています。
当然ファームも勝ちにこだわっていきます。勝つ試合から
覚える野球があれば、負けゲームで大いに反省することも
ある中で選手は育っていきます。ファームも目標は優勝ですが、
僕の理想は1軍が日本一になって。2軍は最下位なんですよ。
1軍は同じ戦力で1シーズンを戦うのは結構むずかしい。
でも、そのときにファームが予備軍を持っていれば
1軍の歯車は止まらないはずです。目標はあくまで
金本監督の胴上げです。ファームの戦力は1軍に
全部吸い上げられてボロボロになっても、
それは2軍にとっては喜ばしいことですよ。
チームが一丸となっている発言。今シーズンの采配が
いまから楽しみだが、早くも驚きの「超変革」指導があった。
3月20日鳴尾浜球場でのオリックス3回戦。抑えの石崎が
9回、フルカウントから投じたストレートを、
ブランコにバックスクリーン越えの超特大決勝ホーマーを
浴びると「あれでいいんです。あれがプロの勝負ですよ」
と絶賛していた。掛布流の発想、本来なら「1発だけは
避ける場面」のアドバイスだろうが、さすが大物。
その選手の素材にもよるが、より大きく育つアドバイスだけに
石崎がどう受け止めたか。今後各選手が指導されたときのひと言、
ひと言の意図をしっかり受け止めることができるなら、
ひ弱なチームから頼もしいチームに超変革するだろう。
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